三菱商事は世界約90の国や地域でビジネスを展開する総合商社です。三大総合商社の1つと日本を代表する企業であり、採用倍率も150〜200倍ほどと言われています。
そんな三菱商事の選考で重要なのは、納得感があり差別化の図れる志望動機を伝えることです。
この記事では、内定者のESを元に三菱商事の志望動機を書く際のポイントを解説します。
三菱商事の志望動機を書く際の注意点
三菱商事の志望動機を書く際は、下記の点に注意しましょう。
自身が企業に提供できる価値を整理しておく
まず、三菱商事に自身がどのような価値を提供できるのか考えてみましょう。
自己分析で、自身の経験を振り返り、自分がどのような人間なのか、どのような強みや考え方を持っているのか、把握します。
他の人にも自身の経験や強み、弱みについてフィードバックをもらい、他者による自分自身の特徴と自分自身で考える特徴が一致するまで、徹底して自己分析を行いましょう。
その上で、三菱商事で働く場合にどのように自分の強みや経験を活かすことができるのか、整理してください。
事前にビジネスモデルを把握しておく
志望動機を作成する前に、三菱商事のビジネスモデルを把握しておくことが重要です。
同社のビジネスモデルは従来の仲介(貿易)事業者から総合事業会社へと変化しています。
従来は、取引先の間に立ち、仲介手数料や金融手数料で利益を得るビジネスモデルで、投資を行うことで手数料の拡大を目指していました。
しかし現在では、取引先や投資先の競争力強化や企業価値向上を直接支援し、サービス対価や投資先からの配当、連結収益で利益をあげることを目指しています。
三菱商事では、川上(原材料)から川下(製品)までの各段階で、顧客のニーズに応じて「資源開発」「生産」「輸送」「販売」を提供しています。
結論ファーストはマスト
志望動機はES、面接ともに結論ファーストがマストです。
倍率が150倍ともいわれる三菱商事の書類選考では、採用担当者は何百枚ものESを確認します。
一人ひとりのESをじっくりと読む時間はない中で、結論ファーストで書かれていないと内容が良くても結局何が言いたいのか伝わりづらくなってしまうのです。
三菱商事を志望する理由がはじめに書かれていれば、応募者の経験や夢を持つきっかけなどその後に続く文章が理解しやすくなります。
過去の経験と志望動機をマッチさせる
過去の経験をもとに、志望動機を書くことも重要です。
志望動機では三菱商事で働くことで、自分、他者、地域、経済などに対してどのような価値貢献をしたいのかを伝えます。
その背景として、自身の経験との一貫性を意識して、どうしてその夢、想いを持つようになったのかを説明する必要があるのです。
「日本の当たり前を途上国にも普及させたい。これは大学時代の〜への留学経験が背景にある。〜」といったように、自身の経験と志望動機をマッチさせましょう。
志望動機の中でアピールすべきポイント
志望動機の中では、以下の4点を意識してアピールしましょう。
求める人物像への共感をアピールする
求める人物像に、自分がどのようにマッチしているのかアピールしましょう。
三菱商事では多様な経験や自己研鑽を通じて、以下の4つの能力を持つ人材を求めています。
社会課題の解決に向けた「高い志」
時代を先取りして新たな価値を導出する「構想力」
国や業界を超え関係者を巻き込みスピーディに構想を実現する「実行力」
企業理念である「三綱領」の精神につながる「高い倫理観」
これらの能力があり、これらの能力を高め続ける努力ができることを、自身の経験をもとに伝えることが重要です。
ほかの商社とのビジネス内容の違いは要アピール
他の商社とのビジネス内容の違いを自分なりに理解して、説明できるようにしておきましょう。
三菱商事は金属資源や天然ガス、産業インフラなどの10グループに、コーポレートスタッフ部門、産業DX部門、次世代エネルギー部門を加えた大勢で、幅広い産業を事業領域としています。
OB訪問や企業研究を行い、三菱商事の強みや他の総合商社との違いを言語化できるようにしておきましょう。
参考までに5大商社の注力領域を表にまとめたので、これらの概要を元にして企業研究を進めてみてください。
商社名 | 三菱商事 | 三井物産 | 伊藤忠 | 住友商事 | 丸紅 |
注力領域 | 金融資源 | 非資源分野 | 非資源分野 | 生活・不動産 メディア デジタル | 金属事業 食料事業 |
企業理念の真意を捉えたアピールは評価が高い
企業知念の真意を捉えたアピールは評価が高くなります。
蜜美商事の企業理念は「三綱領」です。
これは、三菱第4代社長岩崎小彌太の訓諭をもとに、旧三菱商事の行動指針として制定されたもので、解散後も企業理念として残っているものです。
所期奉公:事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、かけがえのない地球環境の意地にも貢献する
処事光明:公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する
立業貿易:全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る
この企業理念をもとに、事業活動を推進していくことが求められているため、企業理念をもとに三菱商事はどのようなビジネスや社会貢献活動を行っているのか、理解を深めましょう。
社風・人との相性も訴求できるとより良い
社風や社員との相性もアピールできるとベストです。
志望動機では、社員の雰囲気や社風など、魅力に感じた部分を素直に伝えることも重要です。
自分の想いや強みを伝えた上で、フィーリングの部分も志望理由に添えることで、より納得感のある志望動機となります。
三菱商事には、求める人物像の通り、高い志や実行力、構想力を持った社員が多く在籍しています。
OB訪問や会社説明会などで感じた社風、社員の特徴と自身の強み、性格がどのように合っているのかを伝えられると良いでしょう。
三菱商事内定者はどう志望動機を作成した?
三菱商事内定者が意識していた志望動機作成のポイントを紹介します。
ワンストーリーで分かりやすく完結させることを意識
志望動機は軸の掛け合わせで説明していくやり方ではなく、ワンストーリーで完結させることが求められます。
志望動機が書きにくいと感じた際は、特定部署の志望動機を一旦書いてみて、その後、理論を一般化させることを意識していました。
志望動機の解像度が低い場合は、課題の特定から取り組み、具体性の発掘をしていました。
その業界で取り組みたい事業を実際に実現しようとする際に起こり得るボトルネックを明確に定義します。その後、そのボトルネックに対して、なぜ三菱商事で取り組めるのかを示しました。
また、志望動機が自分以外の人でも話せる内容になっていないかを確認しました。自分が取り組みたい事柄の根拠づけに使用する経験やワードが差別化できているか意識していました。
過去の経験は、インパクトの強い経験にこだわるのではなく、複数個の小さな経験を線で繋ぎ、継続性を示す方法もおすすめです。
また、志望動機の根拠づけは「OB訪問で◯◯さんから伺った」というような形でも良いと思います。
自らの原体験をベースに志望動機を作る
志望動機については相手の領域で勝負しない(業務のことに深入りしない)ことを意識して練り上げました。
そのためには、
① 自分の原体験をベースに組み立てること
② 相手企業の業務を抽象化して上記と結びつけること
の2点が重要だと考えていました。
万が一、その結びつけに違和感を感じ取られる可能性があったり、より具体的な業務に関連することを話さざるを得なかったりする場合も、「~と御社の社員に伺ったため」というフレーズを咬ませることで自分事化し、正しい手段で情報を取得したスタンスを表現することで、面接官にツッコミづらくする等の工夫はしていました。
加えて、総合商社に限ると「他業界との違いを把握すること」を意識しました。
川上から川下の商流を抑えている
サポーターではなくドライバーとして大規模ビジネスに関われる機会が多い(金融、コンサルとの差別化)
時代に合わせてダイナミックにビジネスモデルを変化させてきた(トレード→事業投資へ)
どんな商材も扱っているがゆえに、他でもできるよね?とならないような商社ならではの特徴はインプットして絡めていました。
実際のESの志望動機の例文をご紹介
最後に、三菱商事内定者、他の総合商社内定者の志望動機を紹介します。
三菱商事内定者の志望動機①
自動車事業本部で、大変革期にあるモビリティ分野での事業開発に携わりたい。私は、自身の研究が頓挫した経験を通じ、世の中の価値ある技術を広げる旗振りになりたいと考え、総合商社を志望する。この行動は、今変化が最も大きく多様な技術が生まれる自動車業界でこそ求められると考え、自動車分野に携わりたいと考える。貴社の「立業貿易」という全世界を見据え事業展開を謀る姿勢のもと、貴社の幅広いネットワークに自身の関係構築能力・やり抜く素養を掛け合わせ、事業を背負う経営人材となることで日本を代表する旗振り役となりたい。
三菱商事内定者の志望動機②
昨年9月に、A大学の指導教授の紹介で、貴社よりB社に出向中のCさんにお話を伺う機会を頂き、世界的な脱炭素要請の中で貴社に果たしうる大きな可能性に強い興味を持ちました。私は現在、大学院で、CO2と再生エネ由来の水素から次世代航空燃料(SAF)を製造する研究を進めていますが、◯◯事業を発展型としてSAFの実用化をビジネスとして手掛けたいと思います。Cさんのように、多様な背景を持つ利害関係者を纏め、イノベーションを推進する経験・スキルを獲得したいと思います。
三菱商事内定者の志望動機③
世界における日本の地位向上に貢献したい。留学先で経営学を専攻し、米国式の経営方式などを学んでいた。ある授業の教授がトヨタのコンサルタント経験があり、授業で日米の経営の違いを取り上げてくれた。それまで日本式の経営=根回し・稟議書・年功序列等の悪いイメージしかなかったが、その教授によると、「たしかに日本の会社は意思決定がすごく遅い。でも、それまでに色んな話をして徹底的に準備をするから、決定してからは一気に進む。推進力の違いがすごく良いと思った。一方でアメリカの企業は理解度のばらつきとかがあって、止まるケースも多い。」と言っていた。この話を聞いて、単純に日本人として誇らしく思ったし、"生きた経営"を学んで海外で実践したい・日本式の経営をもっと海外に認めて欲しいと思った。これができるのは世界中にネットワークを持ち、経営のポジションに就く機会が多い商社しかない。
三菱商事内定者の志望動機④
私は貴社で、事業の中心に立ってビジネスを主導し、世にない価値を生み出す経験をしたい。私はこれまでチームのまとめ役を担うことが多く、主体的な働きかけによって周囲から頼りにされたり、感謝されたりすることに最も自身の存在意義を感じてきた。入社後は、世界各国や幅広い業界を繋ぐ立場で、経営マインドをもって誰よりも主体的に行動し、ビジネスを通じて社会に新たな価値を生み出したい。その過程で、より多様なバックグラウンドを持つ人々を巻き込んでいき、強みであるリーダーシップをよりスケールの大きいものにしていきたい。
伊藤忠商事内定者のES①
私は総合商社のお仕事は、社会の潮流を読んで自ら戦略を立て、その上で全世界•全産業の多種多様なパートナーとビジネスを作り上げていくものだと考えています。
私も大学アメフト部で相手チームを分析してどうやったら勝てるか戦略を立て、その上で戦術スタッフや選手といった価値観の違うメンバーをまとめ上げる中で実践的に勝てるチームを作ってきました。
そう考えますと、総合商社こそ私が最もやりがいと強みを発揮できる戦略を立てて価値観の違うものとチームを作り上げるという仕事ができると考え、志望しています。
Prime.N Salon では、就職活動を本気で取り組む学生に向けたオンラインサロンを運営しています。オンラインサロンでは、1対1のメンター制を基本にして、ESの添削や、面接練習、総合商社や総合デベロッパー社員にお話を聞く集団模擬面接イベントなどを行っています。
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